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2010.04.06 *Tue
117.一番甘いキス
後頭部を強打され、ナツはよろめいている。
解放されたピーター・パンは、ナツの背後に、両手を組んだ拳を振り下ろしたタイガーリリーを見た。ナツはゆっくりと倒れ、動かなくなる。
しかしこの時、ナツは、ただでは転ばず、「うぅ」、タイガーリリーにのしかかるようにして倒れ、ポシェットの中をまさぐり、ピンクの小魚の小瓶をそっと盗んだのだった。
そうとは知らずに、ナツの下でもがくタイガーリリーを、ピーターは助け起こした。どういうわけか自分と視線を合わせようとしないタイガーリリーに、ピーターは言う。
「タイガーリリー、海賊たちを止めるんだ」
逆風、乱れる長い髪、振り払われる手。
タイガーリリーは、ぐわとピーターを睨みつけ、向き合い、言い放った。
「いきなりあらわれて私に命令しないで。私にはこの島を守る義務があるの、あんたなんてどうせ、“フックは遊び相手だから殺すな”っていうんでしょ、そんな動機で私を止めないで、あの男は私たちの島を壊した、
「それならおれだって同罪」
うるさいな、だいたい、あなたのせいだって、わかってないでしょ?今まで何処に行っていたのかしら、人魚たちと一緒に消えたのはわかってる、どうして私に何も言わないの、私がどれだけ待っていたかわかってるの、謝りなさいよ、だいっきらい、
「ごめん」
そうやって、いつもいつもいつも簡単に謝らないでよ、どうせ変わらないくせに、膝ついて謝れ、だいっきらいなんだから、
「わかった、そうする、ごめん」
やだ、そんなことしてほしくないの、本当は、ちがう、やめて、泣いてないってば。」
キス。
世界で一番憎い相手にだけできる、一番甘いキス。
涙をふくために頬に指をはわせて、嫌という言葉を吸い込むために口をふさいで、暴れる腕がいつしか、肩にしがみつき、二人はふわりと飛んだ。そして、桃色と紫色の空の合間に消えていった。朝が、もうすぐそばまで来ていた。
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解放されたピーター・パンは、ナツの背後に、両手を組んだ拳を振り下ろしたタイガーリリーを見た。ナツはゆっくりと倒れ、動かなくなる。
しかしこの時、ナツは、ただでは転ばず、「うぅ」、タイガーリリーにのしかかるようにして倒れ、ポシェットの中をまさぐり、ピンクの小魚の小瓶をそっと盗んだのだった。
そうとは知らずに、ナツの下でもがくタイガーリリーを、ピーターは助け起こした。どういうわけか自分と視線を合わせようとしないタイガーリリーに、ピーターは言う。
「タイガーリリー、海賊たちを止めるんだ」
逆風、乱れる長い髪、振り払われる手。
タイガーリリーは、ぐわとピーターを睨みつけ、向き合い、言い放った。
「いきなりあらわれて私に命令しないで。私にはこの島を守る義務があるの、あんたなんてどうせ、“フックは遊び相手だから殺すな”っていうんでしょ、そんな動機で私を止めないで、あの男は私たちの島を壊した、
「それならおれだって同罪」
うるさいな、だいたい、あなたのせいだって、わかってないでしょ?今まで何処に行っていたのかしら、人魚たちと一緒に消えたのはわかってる、どうして私に何も言わないの、私がどれだけ待っていたかわかってるの、謝りなさいよ、だいっきらい、
「ごめん」
そうやって、いつもいつもいつも簡単に謝らないでよ、どうせ変わらないくせに、膝ついて謝れ、だいっきらいなんだから、
「わかった、そうする、ごめん」
やだ、そんなことしてほしくないの、本当は、ちがう、やめて、泣いてないってば。」
キス。
世界で一番憎い相手にだけできる、一番甘いキス。
涙をふくために頬に指をはわせて、嫌という言葉を吸い込むために口をふさいで、暴れる腕がいつしか、肩にしがみつき、二人はふわりと飛んだ。そして、桃色と紫色の空の合間に消えていった。朝が、もうすぐそばまで来ていた。
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